A−3)海水バクテリアの役割

 

 さて、海水におけるバクテリアは淡水のそれに比べて繁殖しにくいという話をしましたが、その理由は多種多様なバクテリアが共存しながら同時に繁殖していくからです。ここではその中心となるバクテリアの濾過循環サイクルと、バクテリアの役割についてお話をしていきたいと思います。

 

 <バクテリアの濾過循環サイクルについて>

※前々項の海水成分の管理と内容が重なりますが、バクテリアの役目について復習のためもう一度書いてみます。

 

 上図は多種多様なバクテリアのうち、安全水槽で主に活動するバクテリアの生物濾過循環サイクルを表しています。

 

 1)水槽内には常に、魚の糞尿や餌の食べ残しが発生します。物理濾過槽(活性炭やウールマットなど)やプロテインスキマーなどで除去できますが、大部分は残って毒の源になり、生物分解が始まります。エサの与え過ぎが水質が悪化する原因なのはこのためです。

 

 2)水槽内に残った魚の糞尿や餌の食べ残しは、海水中に溶け出したり微生物が分解する事によってタンパク質などに変化します。溶解したタンパク質はウールマットでは濾し取れません。プロテインスキマーなどである程度除去できますが、やはり大部分は水槽内に残ります。

 

 3)海水中に溶解したタンパク質は、様々な種類のバクテリア(主に光合成細菌)や微生物により、「アンモニア(NH3)」へと分解されます。生物の尿にも「アンモニア」は含まれますが、殆どがタンパク質から分解された物です。この「アンモニア」は生物にとって非常に猛毒です。例えば60cm水槽に「おちょこの裏」程度の「アンモニア」を溶かすだけで、水槽内の生体は全滅してしまうでしょう。

 このアンモニアはバクテリアが繁殖していないと分解されることはありません。立ち上げと同時に生体を入れると弱って死に易いのはこのためです。

 

 4)猛毒の「アンモニア」を分解するのが好気性バクテリア(ニトロモナスなど)です。この好気性バクテリアは体内に「アンモニア」を取り込み、水素(H)の替わりに酸素(O)を2つ追加して「亜硝酸塩(NO2)」へと硝化します。

 ※細かい事を言うと実際はもっと多様な変化をしているのですが、分かりやすく NH3→NO2 としています。

 

 5)バクテリアによって分解された「亜硝酸塩」は、「アンモニア」ほど毒性は無いものの、やはり生体にとっては毒です。立ち上げ直後、餌を添加した水槽では、餌→たんぱく質→アンモニア→「亜硝酸塩」と形成され、この濃度が高く検出されます。生物にとって害である亜硝酸塩数値が高いうちは生体を入れず、数値が下がってから導入します。(1ml/L<ppm>以下)

 

 6)好気性バクテリアによって生成された「亜硝酸塩」は、今度は違う種類の好気性バクテリア(ニトロバクターなど)によってもう一つ酸素が加えられ、「硝酸塩(NO3)」に硝化されます。

 

 7)「硝酸塩」へと分解された毒物は、この時点で生体に対してはほぼ無害ですが、蓄積するとやはり不純物なので害を及ぼします。特に無脊椎生物はこの「硝酸塩」に敏感です。このまま放置すると「硝酸塩」が溜まる一方なのでこの時点で定期的な水換え(海水交換)により、硝酸塩を海水ごと除去します。

 

分厚い底砂(3cm以上)や水の流れがよくない場所、ライブロックの下に砂がある場合、以下のサイクルが追加されます。

 

 8)分厚い底砂や水の流れがよくない場所は、酸素濃度が低い「嫌気層」になります。「硝酸塩(NO3)」はここで繁殖する嫌気性バクテリアに「酸素(O)」を取り出される事により、「硝酸塩(NO3)」「亜硝酸塩(NO2)」「窒素(N)」と還元されます。

 また、流れがよどんだ場所、更に嫌気性バクテリアの餌となる「炭酸源」があった場合、好気性バクテリアは炭酸源の周りにコロニー(薄いバクテリアの膜)を作り、その中で嫌気性バクテリアに変化し、同じ還元濾過が行われる場合もあります。これを利用したのが嫌気濾過BOX や BP(バイオプランクトンシステム)です。

 

 9)嫌気性バクテリアによって還元された窒素は生体にほぼ無害で、その殆どが大気中に放出されます。

 ですが更に著しい貧酸素状態な場所では、この嫌気性バクテリアとは違う種類の「編性嫌気性細菌」というバクテリアが発生し、海水中の「硫黄(S)」「水素(H)」を取り込み「硫化水素(H2S)」発生させます。ごく僅かな範囲で編性嫌気性細菌が繁殖し、微量の硫化水素が発生する分には問題ないのですが、水槽の底砂など広範囲で硫化水素が発生するとかなり危険な状態に陥ることがあります。

 この硫化水素は生体にとって猛毒で海水に溶けやすく、溶け出すと猛毒になります。底砂を導入した後に魚が全滅したと言う話を聞きます。これは編性嫌気性細菌によって作られた「硫化水素」が原因と考えられます。ですのでナチュラルシステムでも構築しない限り、この嫌気層を作らない事が非常に大切です。還元濾過(脱窒)における「貧酸素状態」と「著しい貧酸素状態」は異なります。ですので還元濾過をさせるなど意図的に嫌気層を作る以外は、厚く底砂を敷いたり、水流のよどむ場所はなるべく作らないように配慮します。

 

 

<ご注意!>

 最も危険なのが、嫌気濾過をさせようと「底面に通水のない」底砂に炭素源を仕込む事です。底面濾過の様に底砂を海水が通る仕組みなら問題ないのですが、そうでない水槽の底砂に炭素源を埋めると、あっという間に編成嫌気性細菌が繁殖し、多量の硫化水素を発生させてしまいます。

 これ、私が過去に身をもって体験しましたので間違いありません(汗) 底砂は3cm程度でしたが、埋めた数日後には卵の腐った匂いが蔓延していました。急いで生体とライブロックを隔離し循環を止めて底砂をホースで吸い出しましたが、吸い出した底砂は吐き気がするほどの異臭がし、部屋中に卵の腐った匂いが充満するほどでした。全海水の水換え(600リットル以上 涙)をし、えらい目にあいました。

 

 また、設置する場合は「底面濾過」か「底面通水型オーバーフロー」にて底砂への通水を行ってください。貧酸素にしないと硝酸塩が下がらないと言われる方がおられますが、長期間(1ヶ月以上かかる場合もあります)かければ効果は出ます。(硝酸塩数値が上がらなくなる、上昇スピードが緩やかになると言うのも効果の内です)

 炭素源の周りにバクテリアコロニーが出来あがる迄は嫌気性バクテリアが繁殖しないので確かに硝酸塩は下がりません。また、バクテリアコロニーが形成されるとコロニー内部で嫌気濾過が行われますが、周囲を貧酸素にするより硝酸塩処理能力も低く効果が薄いです。

 

 

ですが!

「異常が起きた場合に早急な対処ができない底砂内での貧酸素状態下への炭酸源の投入」はとてつもなく危険です。

 海水水槽は「ゆっくり」が基本です。無理に貧酸素状態を作る事は水質の崩壊を招きますのでご注意下さい。

 

 

 ベルリン式やモナコ式水槽など、サンゴ飼育を中心としたシステム、水換えをあまりしない自然還元により濾過を行うナチュラルシステムを構築する場合は、この嫌気性バクテリアによる「硝酸塩」の還元が重要になってきますが、編性嫌気性細菌を発生させない程度の貧酸素状態を作る管理や設備がかなり難しく、初めて間もない方向けではありません。「〜海水魚・安全水槽のすゝめ〜」では、敢えてこのナチュラル水槽には触れていません。何故なら、相当な知識と経験の身に付いた上級者でも、このナチュラル水槽の構築は失敗する例が多く、また、水槽も巨大な物が必要だからです。

 ただし、硝酸塩を除去する還元濾過についてはイソギンチャクなどの無脊椎生物を飼育する場合に必要になってきます。この還元濾過についてはBPSS(バイオプランクトン&スキマーシステム)など、バクテリアの特性を生かした比較的安全な還元方法もありますので、後ほど紹介致します。

 

 まずは水槽内で発生する毒素を処理する好気性バクテリア(硝化バクテリア)の繁殖を第一優先にします。次項ではこの好気性バクテリアの効率のよい繁殖法を紹介します。


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作者は国語赤点野郎です。文章に不備が合った場合や、分かりにくい事、質問などが御座いましたらどしどしメールをして下さい。ホームページにも反映させていきたいと思っています。

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