A−6−8)硫酸銅使用の影響

 白点虫やウーデニウム繊毛虫の駆除に絶大な効力を発揮する硫酸銅。てっとり早くお魚を治療するには、現在市販されている治療薬の中で最も有効な薬品です。しかし、この硫酸銅は大変恐ろしい後遺症を残すことを、我々アクアリストは覚えておかなくてはなりません。ですがこの項は、「硫酸銅の使用を否定している」のではなく、「硫酸銅を上手に使うには硫酸銅の特性を知らなければならない」をと言うことを踏まえ、硫酸銅の特性について解明していきたいと思います。

硫酸銅は適切な管理治療をすれば、
素晴らしい効能を発揮する画期的な薬品なのです。

 まずこれを念頭に置き、以下の文章を読んでいただければ幸いです。

 

 過去の薬物事件が起こった頃から、硫酸銅の流通はとても厳しくなりました。入手先を調べるだけでもかなりの困難を要しますし、購入には個人情報の明記、および所有登録が必要です。また、グリーンFなどの薬品もこれに近い作用があり、使い方次第では良い結果、悪い結果に大きく別れてしまいます。成分は異なりますが、生体に対する悪影響は同等とお考え下さい。

 硫酸銅の使用が魚にどんな悪影響を及ぼすのか、その代わりになる治療薬はあるのか、その辺りを簡単に検証していきたいと思います。

 

<硫酸銅を上手に使っていきましょう>


1)硫酸銅の色

 硫酸銅は様々な細菌に対する滅菌効果があることで有名です。硫酸銅は粉末状態では白色ですが、水分と出会うと青色に変化します。湿気などの揮発的水分子と結合しても、硫酸銅は同じように青色に変化していきます。これは水分子と結合することにより、青色以外の光を吸収するエネルギーを持つためで、物質はエネルギーを持つと安定すると言う性質があります。硫酸銅は安定化を図るため、水分子と強く結合します。その性質から脱湿剤等に使われることが多い物質です。(劇薬指定)


2)硫酸銅の滅菌効果

 硫酸銅には強い滅菌、殺虫能力があることが知られています。19世紀頃からこの硫酸銅の殺菌性や殺虫能力は既に知られていて、昔から農薬などの殺虫剤に幅広く使用されています。一般的に銅には「血液を構成するヘモグロビンを溶解させる」という性質があります。この他にも、細胞壁の破壊などの性質も持ち、菌類の細胞壁を破り、滅菌効果となって現れます。


3)バクテリアへの影響

 バクテリアも菌の一種です。雑菌や病原虫が硫酸銅によって死滅していくように、硝化細菌、還元細菌などのバクテリアも死滅していきます。なので飼育水槽内への硫酸銅の直接投与は、濾過システムの崩壊を意味し、残留性のある硫酸銅により数ヶ月の間、生物濾過が微弱な死の水槽になる事を念頭に入れなくてはなりません。


4)硫酸銅(銅イオン)の残留性

 硫酸銅は光分子の科学的反応や、マイナスイオンとの結合、物質などの吸収により、その濃度は徐々に低下していきます。しかしこの作用は0.3ppm〜0.1ppmぐらいまではすぐに濃度は落ちるのですが、ある低濃度に達した頃から減少スピードが遅くなり、水替えなどの物理的除去が望める方法でしか、早期の除去はできません。具体的には毎週水替えを行っても、数ヶ月は無脊椎動物を飼える濃度には下がらないと言うことです。無脊椎は0.01ppmの硫酸銅濃度でも死亡する個体が殆どです。それでは100%の水換えをすればいいのでは?と思う方もいらっしゃると思いますが、銅は物質が吸収するため、濾過槽や底砂などに蓄積していますので、100%の水替えを行っても、ある一定の低濃度に達した銅イオンに対しては、効果はあまり期待できません。と言いますか、大幅なPH変化を生体に課すことは非常に危険で、100%の水換えなどはよほどのことがない限り、してはいけません。(隔離して水合わせをする場合を除く)どうしても100%の水換えをしなくてはならない場合は、魚体内のPH濃度がゆっくり変化するように、数時間をかけて念入りな水合わせが必要です。それでも生体には多大なストレスとなることを、覚えておく必要があります。


5)魚への影響

 ここが今回のポイントです。先程も申し上げた通り、硫酸銅は血液成分を溶解させる性質があります。しかも生物への吸収速度が早く、主に腸などの消化器官から体内に取り込まれ、内部器官、特に肝臓内に蓄積されます。蓄積された硫酸銅はあまり浄化されることなく、長期間生体の体内に残留します。蓄積された硫酸銅は細胞の破壊、壊死などを引き起こし、結果的に内臓疾患を発症させる可能性があります。これは薬品採取などで使用される「青酸カリ」と同じく、時間をおいて生体に悪影響を及ぼすと言うことです。

 ですので硫酸銅によって治療された生体は、一時的に繊毛虫などから開放されて元気になりますが、内臓器官が破壊されていき、刻一刻と死へ向かってしまう可能性もあるのです。使用する量、期間によって症状は違ってくると思いますが、魚の寿命を縮めてしまう事は間違いないと思います。


6)無脊椎動物への影響(水槽への直接投与)

 ここで言う無脊椎動物とは、サンゴやイソギンチャクの他に、エビや貝、様々な微生物などの生体も含みます。無脊椎動物は軟体、若しくは甲殻類であるのですが、外部の海水の影響を著しく受けます。また、体内の水分が占める割合は限りなく100%に近く、その殆どが水分で出来ていると言っても過言ではありません。要するに、海水成分の影響を最も受けやすい生体と言うことで、海水に溶けた硫酸銅も簡単に吸収してしまい、内部から体が破壊されていきます。このため無脊椎動物に対する硫酸銅の使用は皆無に等しく、絶対に行ってはならないのです。

  水槽内の微生物(ライブロックや底砂、濾過槽に住む微生物)は、殆どが無脊椎動物です。つまり水槽システムに直接硫酸銅を使用すると、これら全ての微生物が死滅するとお考え下さい。大量な微生物の死亡により、一時的にアンモニア、亜硝酸塩、硝酸塩が激増します。これが何を意味するか。

白点虫を死滅させる濃度の硫酸銅を飼育水槽へ直接投与した場合、魚以外の生体はほぼ全て死滅すると言うことです。

 安易な水槽への直接投与は、底砂に住んでいるゴカイ君、見えないぐらいミニミニだけど残餌を処理してくれていたヨコエビちゃん達、アンモニアや亜硝酸塩と戦っているバクテリア達・・・・この他沢山の微生物達も、死に追いやる事になります。

 

あなたは目に見える有害な1つの病原を死滅させるために、
目に見えない数億の必要微生物を死滅させることが出来ますか?

 

 


 以上のような事から、私は硫酸銅の水槽への直接投与は断じてお勧め出来ません。それよりも魚の体力の向上、免疫力の向上を促す治療の方が、ずっと効果的だと思います。それに平行して、病原を減らす治療(水換えやレベル4〜5の治療)を施し、相乗効果で病状の緩和、治癒に勤めるべきだと思います。

 変な話です。殺虫剤などの猛毒を水槽に入れることは誰も出来ませんよね。でも、硫酸銅は入れることが出来る人がいる。何故?
硫酸銅はとても強力な殺虫殺菌剤なのですが。

 これは単に、投入される方が、硫酸銅の性質と使用における副作用を理解していないからだと思います。 飼育者だけに責任があるのではなく、硫酸銅の流通経路における、説明の不十分さにも問題があると思います。「硫酸銅を使用するとこんな病気が治るよ!」と言った書籍や説明書はあっても、「こんな悪いことが起きるよ!」と明確に詳しく書いてある書籍や説明書がありますか?私は硫酸銅について厳しく書かれたホームページ以外で見たことがありません。

 ですが、硫酸銅で早急な治療をしなければならないほど病状が進んだ生体に対しては、私もやむを得ず硫酸銅治療をすることがあります。ですので常に硫酸銅やGFG、エルバージュなどはストックしています。水槽への直接投与は絶対にしませんが、「隔離水槽」での投薬治療には、病状をよく観察しながら使用することもあります。

 病気の早期治療に画期的な効力をもたらす「硫酸銅治療」
私は適切で生物学的根拠に基づいた明確な使用法、効能、副作用の見解を、硫酸銅の流通経路に定着させて頂きたい、また定着させて行きたいと思っています。


7)硫酸銅の必要性

 この様に被害が大きい硫酸銅の使用ですが、生体は時には深刻な病状を引き起こし、硫酸銅などの即効性のある薬で早期の治療しなければ死亡する場合もあると思います。前途1〜7に矛盾する内容ですが、TPOを考え、生体への影響を考慮した上で処置することが大切だと思います。また、私の独断と偏見でですが、経験上、硫酸銅以上に白点虫を直接死滅させる効果と「即効性」を持ち合わせた薬品はない様に思えます。(海水魚の病気治療に使用できる薬品に限る)確かに白点虫を「減らす」治療薬は存在していますが、その効力は薄く、また、魚体内に寄生した白点虫の最長潜伏期間は7日です。どんな治療薬も魚体内の繊毛虫を死滅させる効果はない(あれば魚は即死するはず)ので、白点虫の撲滅には体内の繊毛虫が全て離脱する、7日の薬浴期間を要する事になります。


8)銅イオン濃度を一定に保つ難しさ

 硫酸銅は粉末を直接水槽へ溶解させてはいけません。濃硫酸銅溶液を浴びた生態は、けいれんを起こして死亡してしまう可能性があります。硫酸銅の添加は新品の海水で粉末を溶き、「点滴」にて行います。下図の様な点滴ペットボトルなどを作成し、ゆっくりとゆっくりと滴下していきます。

 隔離水槽にです

 硫酸銅での治療には、適切な濃度管理が欠かせません。飼育水量を正確に計り、適正濃度を保つ必要があります。また、銅イオンはマイナスイオンや媒体に吸収されることにより、徐々に減少していきます。つまり、時間の経過と共に、適切な追加投与が必要になります。

 言うまでもありませんが、銅イオン濃度が低ければ病原の駆除効果は下がりますし、濃度が高ければ生体の死亡率が高くなります。適切な濃度を維持し続ける事が、硫酸銅治療では絶対的に必要です。

 硫酸銅(銅イオン)の治療適正濃度は、使用する硫酸銅の純度によって全く異なります。ですのでこちらにppm数値を記載することは難しいです。また適正濃度範囲内でも、治癒による体力の向上で見えにくいのですが、銅イオンの副作用だけを見ると、確実に生体は体調を崩しています。こういった理由から、適正範囲内の濃度でも、生体が死に向かってしまう事もあることをご承知の上、正しくお使い下さい。

※市販の硫酸銅に明記されている適正濃度は、かなり濃いめの設定になっています。注意して取り扱って下さい。

 銅イオン濃度の測定には、銅テスターなどを使用します。銅テスターで検索すれば、沢山出てきます。(レッドシー銅テスターなど)
使用する硫酸銅の説明書に記載されている分量を正確に投与し、銅テスターで計測して初めて、その硫酸銅に対する適正濃度が把握できます。

 ただし、上記と矛盾する内容ですが、ある種の硫酸銅な説明書には、0.8ppmを維持するようにと明記されています。これは・・・実際にやってみると解るのですが、瞬間的な治療には問題ありませんが、白点などの長期治療では、チョウやヤッコはかなり高い確率で死亡します。経験者は語ります・・・なので敢えて、濃度を明記します。あくまで参考として、自己責任にて実行してください。

 


測定範囲:0〜0.4ppm
測定最小単位:0.05ppm


 


測定範囲:0〜1.0ppm
測定最小単位:0.01ppm
0.01ppm以下の
イオン化(キレート分子化)
した銅も測定可能

安全水槽のすゝめ・商品紹介の概念

 

 

※塩素中和剤(カルキ抜き)などを投入している水質では、
銅イオン測定数値は小さく出てしまうので注意が必要です。

まずは少ない数値から、生体の様子を見ながら追加して下さい。
様子見は、丸一日の観察期間を設けた方が無難です。
生体に重篤な異常があれば即使用を中止して下さい。

 

 

<独り言>
「硫酸銅治療を飼育水槽に施し、健康だったレモンピールは死亡したが、白点だったタテジマキンチャクダイは生き残った」などと言った治療は、「適切な治療」などではないと思います。(実話です) 限りなく薄知で、単に健康な生体を殺し、病気の魚をどうにか救えただけに過ぎないと思います。「硫酸銅治療が原因で」落とす個体があってはならないのです。そんな治療なら実行しない方がましです。病気になった個体だけを隔離し、その子に対してのみ、徹底的な管理の下で硫酸銅治療をすることをお勧めします。

 よく聞くのが「隔離して治療しても、元の水槽に戻したらまた白点になるから、飼育水槽に直接入れた方がいいんでない?」という意見です。あり得ません・・・治療すべき魚は病魚だけであって、白点にかかっていない健康な魚、水槽内の生物にとっては、硫酸銅治療は薬害の他何者でもないからです。

「白点にかかり体力が落ちて餌も食べなくなってしまったので、隔離治療をした。病気が治り体力を取り戻し、餌も食べるようになった。だた、元の水槽に入れたらまた白点になった」

 考えてみてください。体力が落ちて死に向かっていた魚が、治療前も治療後も同じく白点にかかっていますが、根本的な体力に差があります。餌も食べるようになっていれば、状態は改善した事になります。餌を食べなくなった魚が、餌を食べるようになった。この差は非常に大きいです。体表粘膜も体力も復活してから元の水槽に戻すので、最初の段階からはステップアップしていますし、餌を食べてくれれば体力が付き、抵抗力も高まり、自然治癒へと向かう可能性も高くなります。何もしなければ、そのまま死亡していた可能性もありますから、とにかく病状の改善に向かわせる事が大切かと思います。


8)硫酸銅に代わる同等な効力を持ち、尚かつ低毒性、低残留性の治療薬は?

 残念ながら硫酸銅ほど即効性のある治療薬は、現時点では発売されておりません。ただし、硫酸銅ほど威力はないにしろ、白点病治療に有効な薬品、治療剤は沢山出ています。その中でも特にお勧めなのは、バクテリアにより分解され、水槽内、生体内に蓄積しないタイプの治療剤です。

 私はこの生分解性の治療薬として、バクテリアに分解されるため飼育水槽へ投与できる「マジカルウオーター(天然高純度発酵エタノール)」を使用していますが、効力は硫酸銅には比べものにならないほど低いです。やはり最強の治療薬は硫酸銅かと思います。また、病気の症状を見てGFGも使いますし、最悪の場合は硫酸銅も使用します。隔離水槽で行うのは絶対的な事ですが、魚の寿命を縮めても、今の命を守る方が良策になることもあります。


<お詫びとまとめ>

 厳しい意見を書いてしまい、不快な思いをされた方もいらっしゃったかと思います。改めてお詫び申し上げます。

 しかし・・・海水魚の飼育を初めて間もない方に、副作用の説明も不十分に、簡単に硫酸銅の直接投与を勧める大馬鹿ショップがあるのも事実です。私もこういうショップに硫酸銅に対する効能や悪影響の考えを多数求めましたが、やれ無脊椎がいなければ大丈夫だの、そのうち消えるから大丈夫だの、濃度を低めにすれば安心だの・・・効能と悪影響を聞いてるんだっちゅうのぉおおーまいがっ!!

 失礼しました・・取り乱しました・・・

 

・無脊椎がいる水槽で使用できないのは当たり前。それよりも最初から水槽自体に直接投与する事を勧めるなんて論外です。微生物はほぼ無脊椎動物です。

・そのうち消えるって、通常飼育での換水やマイナスイオンとの結合による自然消滅には「数ヶ月〜1年以上」かかります。アクアセイフなどを大量に使った完全なリセットか、適切な除去手段が必要です。

・濃度を低めにしたら、白点虫は死滅しません。微生物とバクテリアだけが死滅に向かいます。

 

 逆に凄く詳しく説明してくれるお店も沢山あります。こっちの方が多いかも知れませんね。馬鹿ショップは放っておく事にしましょう(汗)

 大切なのは使用によるメリットとデメリット、対象生体に対する効能と副作用、適正な使用方法と注意点です。

 硫酸銅は適切な管理治療をすれば、素晴らしい効能を発揮する画期的な薬品なのです。

 誤解なき様、お願い致します。

 

 硫酸銅は病気治療には様々な即効性の効能がありますが、同時に生体の体力も奪ってしまい、体内に蓄積された硫酸銅は確実に生体の寿命を縮めます。TPOを考え、上手に使っていきましょう。

 硫酸銅治療には適切な処置、濃度管理が絶対的に必要です。あまりお勧め出来ない治療法ですが、早急な対応を要する治療には、しっかりした管理の下では最も有効な治療手段だと思います。安易な飼育水槽への直接投与は悲劇を招きます。硫酸銅治療は隔離水槽にて行うことを強くお勧めします。それに合わせ、弱った生体の体力の向上、免疫力の向上などを考え、栄養豊富な餌や免疫力向上物質などを与え、生体自身の病原に打ち勝つ力も共に向上させることが大切です。

 また、水槽自体の治療(病原を減らす対策)は、薬などを使用せず、物理的に除去していく事をお勧めします。レベル5の撹拌治療、こまめな水換えなどがこれにあたります。

 「薬」だけに頼らず、病状、システム全体、病気の原因を幅広く考え、バランスを考えながら総合的に治療して行くことが大切ですね。


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作者は国語赤点野郎です。文章に不備が合った場合や、分かりにくい事、質問などが御座いましたらどしどしメールをして下さい。ホームページにも反映させていきたいと思っています。

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