B−5)濾過装置の種類

 

 この項では、海水魚を飼育する上で最も大切な「濾過槽」について、その種類と設置法をお話ししていきたいと思います。濾過槽には様々な種類があります。どれも環境に応じて向き、不向きがあります。安全水槽では「オーバーフロー濾過システム」をお勧めしていますが、お住まいの環境などによって、この限りでは無いと思います。貴方に最も適した濾過環境を構築してください。また、適した濾過槽の他に、海水では全く意味をなさない濾過装置も、ご理解頂くために説明させていただきます。安全水槽における生物濾過能力とメンテナンス性、維持費、初期費用の4項目を、10段階評価、★の数でイメージしています。★の数が多いほど、優れた濾過装置と言えます。(評価は作者の見解です)

 

1)壁掛け式濾過ボックス

 生物濾過能力  :<低い>☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★★★★<良い>
 維持費     :<高い>★★★★☆☆☆☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★★★★★★<安い>

 総合評価    :生物濾過能力がないので海水では無意味だが、使い方によっては重宝する?

 淡水魚水槽では大活躍の外掛け式濾過ボックス。しかし、このホームページを読んでこられた方なら、壁掛け式濾過ボックスは海水水槽の生物濾過という概念からは全く意味をなさないことはお分かりだと思います。この種の濾過器は、単なる物理濾過槽(ゴミや汚れをこし取ったり吸着させるるもの)ですので、バクテリアが繁殖する媒体を多く導入できません。また、こし取った汚れも海水に溶けて次第に小さくなり、やがてはアンモニアへ変化してしまいます。定期的な濾過シートの交換(3日に一回など)が必要な上に、流量も少なく物理濾過の役目しか果たさない壁掛け式濾過ボックスは、海水水槽では無意味な物と言えます。

 <2008/05/14追記>
 正し、この外掛け式濾過槽は、使い方によっては素晴らしい能力を発揮します。例えば底面濾過槽に外掛け濾過槽の給水口を接続すると、ポンプの役割を果たします。また、水槽内へ広範囲でソフトな水流を発生させたい場合や、開放的なその性質から海水への酸素供給にも使えます。消費電力も少なく、濾過の「サブ的な」使用においては使いやすい商品です。

 

2)外部濾過装置(密閉式濾過層

 生物濾過能力  :<低い>★★★☆☆☆☆☆☆☆<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★☆☆☆☆☆<良い>
 維持費     :<高い>★★★★☆☆☆☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★★★★☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★☆☆☆☆☆☆<良い>

 水槽外部に設置する、密閉された濾過槽とポンプをかね揃えた濾過装置です。

 外部濾過装置は、濾過槽と給排水部をホースで分離した構造をしているため、水槽内をスッキリさせることが出来ます。しかし容量としては不十分です。写真の外部濾過槽で、7リットルほどの容量しかありません。また、バクテリアへの酸素供給は飼育水に含まれる酸素が全てです。要するに足りません。

 生物濾過水槽への給水や補助的な濾過槽として使用する他は、あまり濾過能力はない装置と言えます。

 しかし魚を驚かすことなく、水槽から離れた場所からメンテナンスが出来ますので、管理の上ではいい濾過槽とも言えます。安全水槽において外部濾過装置のみを使用するのであれば、数多く設置する必要があります。5cmのお魚10匹を飼育するためには、写真の外部濾過槽なら7台ほど必要です。(酸素供給性が良くないため)

 ですが、このパワーボックスやエーハイムなどをお持ちの方も諦めることはありません。この機器は「濾過」と同時に「ポンプ」の役割も果たします。適正な容量を持つ「生物濾過槽」を別に設置し、そこへ排水を流し込む形で導入すればばっちりです。上部濾過槽へ排水を流すなど、工夫次第で十分使えます。

 

3)外部濾過装置・複数接続

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★☆☆☆☆☆<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★☆☆☆☆☆☆☆<良い>
 維持費     :<高い>★★★☆☆☆☆☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★☆☆☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★☆☆☆☆☆☆<良い>

  上記2)の外部濾過装置を、複数設置する濾過システム構築方法です。確かに濾過能力は上がりますが、複数の外部濾過装置が稼働するので、電気代もかかり、メンテナンスも数が多くて大変です。濾過槽への酸素供給も、飼育水槽からしか出来ないので、効率の良い濾過システムとは言えないと思います。ただし、メンテナンス時はお魚水槽から離れた場所で出来るので、魚に与えるストレスを少なくすることはできます。

 

 

4)上部濾過装置

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★☆☆☆☆☆<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★★★★<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★★★★☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★★★☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★★★☆☆☆<良い> ※単体では濾過能力不足

  水槽上面に設置する濾過装置です。淡水魚用は容量も小さく、海水魚水槽では役不足です。海水魚用の上部濾過装置は、多少容量が多くなっており、生物濾過材もより多く投入できますが、せいぜい10〜20リットル程度なので、単体では濾過能力がまだまだ足りません。海水はシャワーのようなパイプで供給されますので、酸素も十分に行き渡ります。ですので生物濾過の補助的な装置として設置するなら、濾過に対して有効といえます。

 

 

 

<大容量&高度酸素供給型上部濾過槽・UHFシリーズ>保科エンタープライズ様

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★★★★★★<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★★★★<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★★★★☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★☆☆☆☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★★★★☆☆<良い>

 写真は保科エンタープライズ様のHUFシリーズ・大容量高度酸素供給型の上部濾過槽です。写真上部、背の高いアクリル製の箱が濾過槽です。酸素供給が有利な形状である上部濾過槽のメリットを最大限に生かし、ウエット/ドライの容量調整ができ、両構造を持つ高性能上部濾過槽です。酸素をふんだんに取り入れられる様、海水噴射パイプを採用しています。内部構造を工夫することにより、上部濾過槽の欠点である「濾過容量不足」を克服し、生物濾過能力を大幅に引き出した濾過槽です。内部に使用されている部品は全て海水対応機器で構成され、安全かつ高性能な海水魚飼育システムだと思います。

安全水槽のすめ・商品紹介の概念

 

5)底面濾過装置

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★☆☆☆☆☆<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★☆☆☆☆☆☆☆☆☆<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★★★★☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★★★★☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★☆☆☆☆☆<良い>

 

 水槽底面、底砂の下に設置する濾過装置です。底砂も濾過層として機能するので、容量は大きく取れます。また、底砂を厚く敷いても、底を海水が通り抜けるので、嫌気層が出来にくいです。しかし・・・飼育水槽の1/4を濾過槽としなくてはならず、見栄えも悪いです。しかも水槽の底に設置することから、メンテナンス性は最悪です。水槽内のレイアウトや、魚を移動させてからでないと掃除ができません。メンテナンスが面倒だと、どうしても掃除も怠りがちになるものです。

 ただし、維持費が安く濾過容量も大きく取れる底面濾過は、メンテナンスさえしっかりと行えばコストパフォーマンスに大変優れた濾過方法だと思います。

 

6)オーバーフロー濾過装置

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★★★★★★<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★★★★<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★★★☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★☆☆☆☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★★★★☆☆<良い>

 下段の濾過槽から上段の飼育水槽へ海水を送り、溢れた海水がオーバーフロー(以下OF)パイプを通り、濾過槽へ再び流れ込み循環するタイプの濾過システムです。水面と水底の両方から濾過槽へ水を落とし循環させるシステムですので、水面に浮いたエサの油なども除去できます。OF濾過槽の種類にはウエット式とドライ式があります。海水魚を飼育する上で、これ以上ないぐらいの生物濾過能力を持っています。また、濾過槽へ様々な機器を設置することが出来るので、メンテナンス性や飼育水槽がスッキリするなど、外見にも優れています。

 写真のシステムは4段、下駄箱タイプの自作OFシステムです。スペースが少ない玄関に置くため、水槽を互い違いに設置し、下駄箱としても使用できる様に設計しています。一番下が濾過槽、一番上の水槽は底面濾過、容量約130リットルの飼育容量に対し、40リットルの生物濾過を設けています。循環は最下段の濾過槽から最上段の飼育水槽へポンプで海水を送り、上から順番にOFパイプにてフローする設計です。下から2段目は別循環の金魚水槽です。ややこしい(笑)

 OFシステムは飼育水槽にOF加工をしなければならず、濾過槽を準備したりで設置する初期費用が高くなります。90cmのガラス水槽でOFシステムを設計にするには、水槽加工と濾過槽、濾過材、ポンプなどの設置など、市販ガラス水槽で自作しても3〜5万円位はかかるでしょう。

 <ウエット式オーバーフロー濾過槽>

 ウエット式とは、生物濾過槽内の濾材が全て水中に設置された方式です。こちらが一般的で、濾過槽への酸素は「物理濾過槽」へ勢いよく落ちた海水によって供給されます。

 大型水槽のオーバーフロー濾過槽の殆どがこれで、生け簀のある寿司屋さんなどで多く見かけます。濾材は主にサンゴ石や貝殻片などを使用し、濾材を多く投入できるので数多くのバクテリアが繁殖し、非常に高い濾過能力を発揮します。

 

 

 

<ドライ式オーバーフロー濾過槽>

 ドライ式オーバーフローとは、生物濾過槽の濾材が濾過槽の水面より上に濾材を設置するタイプの濾過方式です。濾材を水面より上に設置することにより、そこを流れる水が空気に多く触れ、大量の酸素が供給され、バクテリアが活発に活動します。

 濾材は主に、プラスチックで出来た人工的なものを使用します。イガイガの松ぼっくりの様な形をしています。このシステムでは濾過槽内のエアレーションは特に必要なく、必要な酸素が十分に供給されます。

 ただし、濾材がかなり高価です。また、空気に濾材が触れていることにより海水の蒸発スピードも早く、定期的な足し水が必要です。

 

 酸素を多く取り込めるメリットから、左図の様にウエット部分と組み合わせて使用されるのが一般的です。

 

7)横置きオーバーフロー濾過装置

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★★★★★★<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★★★★<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★★★☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★★★☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★★★★☆☆<良い>

 市販されている物はなく、100%自作なので初期費用は安く済みます。濾過方法は通常のオーバーフローと変わらないのですが、飼育水槽と濾過水槽の高低差を極限まで抑え、ポンプの揚力低下を防いでいますので、その分同じポンプでも流量を稼ぐことが出来ます。

 設置場所などの都合上、上下にシステムを拡張できない場合にも有効だと思います。

 高低差を少なくする事により揚程の水圧が減り、ポンプのサイズを大きくしなくても流量が稼げるので、電気代の節約になります。また、勢いよく水が濾過槽へ落ち込まず、水の音も比較的静かです。正し、生物濾過槽でのエアレーションは必須となります。(イラストの濾過槽は1層式ですが、エアレーションを設置するため2層式にしたほうが良いと思います)

 

 もう一つの利点として、1つの濾過サイクル内に水槽をいくつも増やせるメリットがあります。あとから濾過水槽を追加することもできます。我が家のテスト水槽システムは水槽や濾過槽など色々と変更する事が多いので、このタイプの循環を採用しています。

 

 スペースさえあれば同じ循環にいくらでも水槽を追加できるので、時を重ねるごとにどんどん水槽が増えて行くんですよねぇ。困った困った(笑)

 

 

 

8)逆オーバーフロー濾過装置

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★★★★★★<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★☆☆☆<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★☆☆☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★☆☆☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★★★☆☆☆<良い>

 

 この方式は加工が難しいガラス水槽や、既にお魚が入っていて加工がし辛い水槽へ、新たに濾過槽を追加する方法として有効です。新たに追加する生物濾過槽は、市販のプラスチックで出来たケースなどが加工し易く適しています。この追加する生物濾過槽ですが、極端に言えばバケツや大きめの洗面器でも構いません。上部濾過槽でもいいやん!と言う声が聞こえてきそうです(笑)また、発泡スチロールで出来た「クーラーボックス」でも代用となります。とにかく追加する生物濾過槽内にオーバーフロー管を設置し、防水処理を施せれば何を容器に使用しても構いません。(濾過槽にはスノコを敷きます)

 上記のイラストは「密閉された濾過槽」である外部濾過槽を使用している水槽を、逆オーバーフローに改造した例です。密閉された外部濾過槽のみでの生物濾過では、どうしてもバクテリアの繁殖に悪影響が出てきます。これは密閉式外部濾過槽の欠点とも言えます。現にパワーボックスなどの外部濾過槽のみの生物濾過を使用した飼育システムでは、水質が良好に保てず、病気が多発する事が非常に多いのも事実です。この欠点を補うため、開放的な生物濾過槽を追加し、バクテリアの力を最大限に生かす事により水質改善の効果が期待できます。

 ※水中ポンプで構築する場合は、生物濾過槽の手前にウールマットなどの物理濾過層を設置します。

 

 注意点としては、水槽から取水する取水口に、左図のような取水板を取り付けた方が、水槽上下全体から濾過槽へ海水を送水できるので効果的です。アクリルで作成しても良いのですが、100円ショップで売っている「円柱形スパゲティのストッカー」が、見た目はともかく簡単に加工できていいです。

 

9)水槽内オーバーフロー濾過装置

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★★★★☆☆<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★★☆☆<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★☆☆☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★★★★☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★★★☆☆☆<良い>

 これは水槽内に濾過槽を作ってしまおうという発想です。水槽の約1/4に仕切り板を設置し、そこでオーバーフローを構築します。このシステムは90リットル以上の水量を持つ水槽でのみ安全に濾過が出来ます。飼育水槽内に生物濾過槽を設置するので、大きな水槽でも飼育スペースは小さくなりますが、一風変わっていておしゃれですね。

 

 

プロ仕様の水槽内オーバーフローシステム(濾過槽一体型水槽)

写真(保科エンタープライズ様の美海(うつくしい)シリーズ/同水槽・25年目のマクロス)
 

安全水槽のすめ・商品紹介の概念

 生物濾過能力  :<低い>★★★★★★★★★★<高い>
 メンテナンス性 :<悪い>★★★★★★★★☆☆<良い>
 維持費     :<高い>★★★★★★☆☆☆☆<安い>
 初期費用    :<高い>★★★★☆☆☆☆☆☆<安い>

 総合評価    :<悪い>★★★★★★★★☆☆<良い>

 

 上の写真は「簡単ろ過一体型水槽」です。観賞魚・活魚水槽 設計施工から海水魚の販売、メンテナンスまでのトータルコンサルティング業を行っている「保科エンタープライズ様」の商品です。こちらのシステムはかなり高いレベルでの飼育が可能な商品です。この水槽で何とマクロスが25年目を迎えたそうです。

 


 濾過システムは用途や環境に合わせ、飼育環境に合ったものを導入してください。海水魚を飼育するのであれば、後々の事を考えてもオーバーフローが無難です。初期費用はかさみますが、海水魚を飼育する事もメンテナンスも比較的楽ちんです。

 

 では次に、照明器具の計画についてお話ししたいと思います。


B−6「照明器具の計画」へ進む


作者は国語赤点野郎です。文章に不備が合った場合や、分かりにくい事、質問などが御座いましたらどしどしメールをして下さい。ホームページにも反映させていきたいと思っています。

TOPページへ

安全水槽のすゝめ・飼育用製品の
販売ページ(mini-shop)へ